シリーズ:劇場のホスピタリティ 「小劇場で取り組む鑑賞サポート」


障害がある方や日本語がわからない方が舞台芸術を楽しむための鑑賞サポートは、2013年に制定された「障害者差別解消法」、2024年4月より施行される民間事業者の「合理的配慮の義務化」も背景に(内閣府サイト)、演劇界でも急速に広がっています。タブレット端末を活用した字幕表示や手話通訳、事前舞台説明会など、観る人を限定しないアクセシビリティ対応が少しずつ浸透していく中で、小劇場での対応を積極的におこなっているのが「タカハ劇団」です。劇団主宰で脚本・演出も手がける高羽彩さんと、制作を担う株式会社momocan(モモカン)の半田桃子さんに、予算、助成、創作への影響などについてうかがいました(全5ページ)。

取材・文/中川實穗

〇取り組みのきっかけ

――タカハ劇団さんの鑑賞サポートは、2021年の『美談殺人』から本格的に導入され、昨年上演された『ヒトラーを画家にする話』では、【舞台手話通訳/バリアフリー字幕のタブレット貸し出し/音声ガイド/台本貸出/事前舞台説明会/劇場の最寄駅からの移動サポート】が用意されました。小劇場でこういった対応をする劇団はまだまだ少ないですが、なぜ導入に踏み切ったのか経緯をお聞かせください。

高羽彩(以下、高羽) 鑑賞サポート自体、実はかなり昔からやってみたいなと思っていました。ただそのためには制作体制がしっかりしていないと難しいということと、あとはお金の問題もあって、なかなか手が出ませんでした。でも数年前に、こちらにいらっしゃる半田(桃子)さんにタカハ劇団の制作をお願いすることになって、制作体制も整い、それにより助成金の申請ができるようになりました。それで、「助成金が出るのなら、鑑賞サポート対応をしたいんだけど」という話をしたら、実は半田さんも鑑賞サポートをやってみたいという気持ちがあったことがわかって。半田さんの知人からパラブラさん(Palabra株式会社)と繋いでいただくことができました。当時、パラブラさんは映画での鑑賞サポート対応を行うことが多かったので、「小劇場でもできますかね?」という相談をしました。

――パラブラさんはなんとおっしゃっていましたか?

高羽 できることからやればいいんじゃないかと言ってくださいました。「無理していきなり全ての人を包括するようなサービスをするんじゃなくて、できるところからやればいいんですよ」って。それで、「じゃあやろう」っていう。たまたま『美談殺人』は、登場人物5人のうち1人が「喋れない代わりに手話で会話する」というキャラクターだったこともあり、「キャラクターとしても動くけど、舞台手話通訳者としても動く」というアイデアを思いついて、これならできるぞという感じで始めました。

――半田さんは鑑賞サポート対応をするのは初めてでしたか?

半田桃子(以下、半田) 初めてでした。ちょうどその頃、知り合いから「パラブラさんと繋がりができたからもし興味あれば」っていう話をいただいていたので、一回話を聞きにいってみましょうということになりました。

――それですぐ実現できるものですか。

半田 例えば大きい会社だと、新しい取り組みにはたくさんの承認が必要で時間もかかると思うのですが、うちは小回りがきく会社なので、「やってみたい」と言ってくださる方がいれば、「じゃあやろう」ということができます。そこはうちのいいところでもあるので、とりあえず一回やってみようかというところからスタートしました。

2023年に新宿シアタートップスで上演されたタカハ劇団『おわたり』の鑑賞サポート

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