インタビュー | 一般社団法人tokyo sisters 堀川炎さん


一般社団法人tokyo sistersは活動のひとつとして世田谷シルクを運営し、主に舞台作品を創作している。2008年の旗揚げ以降国内外での上演をおこない、近年は野外劇場、児童演劇、国際共同制作が主軸だ。主宰の堀川炎氏は、脚本・演出・構成・振付・音楽・舞台美術などを担っており、今回のインタビューではその取り組みから、様々な地域での作品上演についてお話を伺った。

 

取材日:2025年10月7日

取材・文:山﨑健太

 

大阪公演での温かい反応

 

――世田谷シルクでは今年、2024年に「SCOTサマー・シーズン2024」(富山県利賀村)と「豊岡演劇祭2024」(兵庫県豊岡市)で上演した『野火』を大阪の聖天通商店街にある小劇場「聖天通劇場」で再演しました。手応えはいかがでしたか?

 

実は劇団の主催事業として拠点である東京以外での公演を行なうのは十数年ぶりで本当に久しぶりだったんです。今回は一人芝居ということで身軽に持っていける作品だったのと、出演俳優の永井秀樹さんが会場の聖天通劇場の支配人をされている縁で大阪公演が実現しました。招聘していただいてその場所に行くのと自分たちで公演を持っていくのとではやっぱり全然違うんですよね。今回の公演は本当に手弁当感が強くて、自分たちで全てをやらなければならなかった分、現地のスタッフと密接に関われたのはよかったです。

お客さんの反応も本当に温かくて、終わった後も「すごくよかった」といったことをその場で直接言ってくれたのはうれしかったですね。どちらがいいということではないですけど、それはやっぱり演劇の言わば「玄人」みたいな観客が集まる利賀での反応とは全然違いました。商店街にランチに来た親子がふらっと寄ってくださったり、地元の方々が前情報なしに急にいらっしゃることも多くて、当日券もたくさん出ました。そうやって劇場が地域に密着していることを感じられる機会は東京ではなかなかないので新鮮でした。

『野火』という作品自体が好きだということで観に来てくださった方もいらっしゃって、映画化もされている原作小説の力を改めて感じる機会にもなりました。利賀、豊岡、大阪と継続して上演してきたことで作品をブラッシュアップすることができましたし、利賀で観て豊岡でも観てというかたちで、作品を気に入ってくださった方がいたこともうれしかったです。

 

◯その土地の人とつながる

 

――主催公演に限らず、拠点以外の地域での公演の際に心がけていることを教えてください。

 

まずはやはり現地とのつながりを大事にしています。これまで奥能登や瀬戸内やアヴィニョン(フランス)の芸術祭のほか、インドやスウェーデンでのツアーなどさまざまな場所で公演をおこなってきましたが、現地に入ってすぐに上演するということではなく、早めに現地入りしてあちこち行ってみたり、その土地の人たちと交流をしてみたりするということですね。その地域の人たちがどういう生活をして、どういう考え方をしているかに触れる。現地の言葉や踊りなどを教わることもあります。もちろんそこには広報的な側面もあって、現地の写真や日々の活動をSNSで発信したりもするんですけど、そうやってその土地とそこに住む人のことを知っていくことが作品に大きく影響を与えるのではないかと思っているんです。そもそも公演する地域で必ずしも演劇が身近なものとしてあるわけでもありません。お客さんのなかには演劇を初めて見る方もたくさんいますし、小さな子どもからお年寄りまで様々な方がいらっしゃったりもする。演劇を見に行くというよりは何か珍しいものを見に行くような感覚で来てくださる方も多いような印象があります。そういう方たちに見てもらえるということが東京とはまた違った場所でやることの意義なのかなとも思っています。その土地の方に敬意を持って上演するというのが大前提ですね。

 

◯演劇を開き続けること

 

――観客が演劇にアクセスしやすくするための工夫はどのようにされているのでしょうか?

 

劇場ではなく、山の中や池や古民家といった公演のためではない場所で上演する場合も多いので、そういうときはそもそも会場にアクセスすること自体が物理的に大変でもあるんですよね。会場までの道を整備したり、場合によってはシャトルバスを手配したり、夜だったら足元の明かりを用意したり。そうやって観客の皆さんが気持ちよく会場まで来られるような工夫は様々にしています。会場へのアクセスはもちろん野外での公演に限った話ではなくて、劇場での公演の場合は、たとえば車椅子の方のための段差のないルートを確認して案内できるようにする、といったバリアフリー対応をしています。様々な方に作品を見ていただくための工夫という意味では、託児サービスや英語字幕、英語台本の貸し出しなどの対応もしています。予算の制約などもあって、全ての公演で全ての対応を実施できているわけではないのですけれど、可能な限り実施したいと思ってやっています。

 

――英語字幕や英語台本の貸し出しについてはどれくらいの方が利用されているんでしょうか?

 

そこは公演によってかなり差がありますね。自主公演だと1回の公演で2、3人ということもありますし、芸術祭だともう少し多い印象です。でも、ときには本当にふらっと英語話者の方が来られることもあるんです。観客数では、たとえば利賀での上演だと「SCOTサマー・シーズン」という国際共同制作や国外からの観客が多い場という特性もあって、それなりの人数の英語話者の方がいらっしゃるのですが、演劇祭の特性上行っていません。

こういうアクセシビリティ対応というのは、利用する方が少ないからやらないということではなく、あまり利用する方がいないときから積み上げていかないと対応できるものではないと思うので、今後も継続して実施していきたいです。


一般社団法人tokyo sisters

代表

堀川炎(ほりかわ・ほのお)

世田谷シルク主宰。演出・劇作・振付・俳優。日本劇作家協会所属。

劇団では「くすっと笑えるアート」をテーマに、ビジュアルアートを中心とした演技演出や創作舞踊を上演している。また、個人での演出では、近年は福島や戦争を題材とした作品を手がけ、劇団とは異なるテーマで評価を得ている。一方、スウェーデンでの研修中にオペラの魅力を知り、演劇活動の傍らオペラにも携わっている。

世田谷区芸術アワード“飛翔”、舞台芸術部門賞、利賀演劇人コンクール、奨励賞、観客賞。


 

「日本の演劇」未来プロジェクト 参加公演

世田谷シルク『野火』

2025年6月20日~22日 大阪府 聖天通劇場

No items found.
インタビュー
広報事業
2025年度

期間
開催地
会場
公式サイト
備考